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2006年6月30日 (金)

モミランの思い出・・・


モミラン・奥多摩産」 この花を見ていると懐かしい人との思い出が蘇ります。がむしゃらに何でも見て、やってみたかったあの頃の、でも、とーっても楽しかった思い出です。
最近、「夏リスト」の植物や、これから増殖しようと思っている植物たちの資料を探すにあたり、山渓の「レッドデータブック」を開く事が多くなりました。
僕はこの本を読んでいると、ふと、懐かしいある人との思い出が頭を過ぎります。
それは僕が山草会に入って間もなくの十代の頃の事です。
僕が野生ラン好きとわかると、一人のご夫人がすぐに声を掛けてくださいました。
「今度奥多摩にランを見に行くの、良かったら一緒に行かない」そう言って野生ラン探索に誘ってくださいました。メンバーは僕を含めて5人です。
その時に、この写真のモミランのあった自生地に案内してくださったのが、当時、東大の研修生で、その後「レッドデータブック」委員長だった井上健さんです。
始めて見たモミランの自生地は、バス停横の林道の崖の渕にある大きなカヤの木にモサモサと群がって着いていました。
落雷で主木は吹き飛ばされて、横のかろうじて生きている枝にびっしりと着いていました。
「親木が枯れそうだから永い事無いね・・・」そう話すと、少しでも永く生きてくれる事を皆で願いました。
井上さんとはその後も「富澤氏、千葉県のTにダイサギソウやイヨトンボがあったみたいだから探しに行かないか」「房州南部のCにも有りそうなのだよ、行ってみないか」といっては二人で休耕田を探し回ったり、奥多摩のこの場所もその後も何度か足を運び、モミランの無事を確認しました。野生ランやサクラソウ等について、井上さんからは沢山の事を学ばせて頂きました。
ある夜は電話で「いやいや富澤氏、今日雲竜渓谷に行ったら○○草が崖から落ちていたのだよ。ん~だから枯れちゃうんで拾ってきたのだよ。いやいや・・・おぬしの食虫仲間で何とか出来ないかと思って・・・」と言って、夜中に文京区の自宅まで○○草をもらいに伺った事もあります。なぜか、その時は隣の韓国人の家の焼肉の匂いが記憶にこびりついています。
白馬のトガクシショウマや長野のタデスミレ等、井上さんを中心に部会のみんなで鑑賞させていただき、教えていただいた事もありました。とても楽しい一泊旅行でした。「トガクシショウマ」には実生苗の一つ一つにもナンバリングが施されて、毎年の研究材料としていた様子でしたが、後日「そー言えばあのトガクシショウマはどーなったの」と聞くと、「いやいやいや・・・じつはね、あれは全部採られてしまったのだよ・・・」と寂しそうに教えてくれた事もあります。
そして3年前の2003年の夏の日、新聞の片隅にその記事は掲載されていました。
「サハリンで植物学者感電死」
井上さんは樺太で植物探索中に他界されました。地盤の柔らかい所で、倒れかけていた高圧の送電線に吸い込まれる様に接触してしまったそうです。
悲しい事に「レッドデータブック」が井上さんの最後の仕事になってしまいました。
「いやいやいや・・まあまあ・・」井上さん独特の口癖です。
・・・「富澤氏、トンボソウの自生地でね、夜中に木の上に登って電気をつけて、網を持って跳んでくる虫を捕まえるのだよ。そしてその虫にランの花粉がついているかどうかを確かめるのだよ。夜中だろう・・・八丈島まで来て、なんでこんな事やってるんだろうって・・・いやいや・・・なんか空しくなってくるのだよ。」「富澤氏、なんか面白い野生ランが入ったら教えてくれないか。実は今度野生ランの本を作るのだよ。探しているランの資料あげるから協力してくれないか・・・」
みんな、つい昨日の話のようです。
そういえば最後に奥多摩に行ったときにホッチキスのタマを持っていって、二人で別の木に移植してみたモミランたちはどうなったんだろう。それより最初のカヤの木は今でも元気なんだろうか・・・。
「レッドデータブック」を開くたびに、「モミラン」を見るたびに、井上健さんを思い出します。
奥多摩のモミラン、こんど一度確かめに行ってみよう・・・。

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コメント

はじめまして、モミランを調べていてたどり着きました。なんとも美しい花ですね。数年前より野山の自生の花を見たくて夫婦で花散歩しています。レッドデーターブックではランを井上さんが撮影していたのですね。ランのコメントによって開発や乱獲が多い事を知り残念な気持ちをいつも抱いておりました。実際に盗掘された無惨な様を見た事もあります。モミランは奥多摩ということですが、多摩湖周辺あたりでしょうか?探して見たいなと思っていますが...もし差し支えなければヒントいただけたら嬉しいのですが..ご迷惑でしたらいいですから。花巡りをしながら、いろんな方との出会いもあって考えさせられる事も多くあります。美しい花たちがいつまでも咲いていける環境を保ちたいものですね。

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